sweet-present




あ〜良い気持ちだ
俺は万年床の布団の上に寝転がって大きく伸びをした

久しぶりに良いモン喰って一杯飲んで…


一杯っていうか…い〜っぱい?


まぁ俺の金じゃねぇから懐も全く痛まねぇし
ありがとうXmas
ありがとうサンタ

つまり…Xmasパーティーって奴で飲み食いした訳

金の出所はババァとお妙
駄眼鏡と神楽の為とか言いつつ…結局みんな馬鹿騒ぎが好きなだけ
俺は上手くそのご相伴に預かったっつーか…



宴会の後片づけとか嫌なんでとっととバックレて帰って来ました
てな訳で家でのんびり

今日は神楽も誰もいねぇし…
静かっつーか…
ちょっと怖いっつーか…

あ…まぁ何だ冬にスタンド来る訳ねぇし
奴らが出るのは夏と相場が決まってるし
大丈夫大丈夫

うん
何ともないからホラ

さっきから外でカタカタいってんのも風だから多分
ホラ窓も鳴りだしたし…


って俺が視線を窓にやると
ななな…なんか窓枠に指みたいなモンが…

一瞬にして身体が硬直した
いや…俺今布団だから
布団と一体化してるから

誰も居ないから此処には来ないでくれぇ〜

心の中で激しく叫び声を上げる
指は尚も窓枠を探っていて…どうも窓をこじ開け様としている風で


ちょ…ちょっと待て
スタンドなら窓なんて通り抜ければ良い訳で
…何でこじ開け様としてる訳?


頭の冷えてきた俺はゆっくりと考えを巡らせる


外で四苦八苦してる奴の指先が漸く窓枠から1本2本と侵入して来た
そういや俺…鍵閉めて無かったわ
別に盗られるもんもねぇから

指先と一緒に隙間から紅い袖口が覗く

紅い袖口…?
てか…なんか声聞こえんだけど

ちょっ…よっ…とか

聞き覚えあんだけど…紅い服着た奴で


ああ…そゆこと……


ふふーんと鼻息を洩らすと俺はゆっくりと起き上がった

硝子に映ったもっさりとした頭に俺は確信する
サンタバリの紅い服にあの頭っていやぁ彼奴しかいねぇ
てか…何内緒で来てんだよ
後ろの荷物って何だよ

なかなか入ってこねぇ奴に苛々
ちょ…とっとと入って来いよ

うずうずしている俺の前で窓が数cm開き
其処から手首が侵入して来る

もう少し…もう少し…
完全に腕が侵入した所でその手首をぎゅっと掴むと思いっきり室内に引き入れた


「おわ?」


紅い服の男は間の抜けた声を上げて室内に倒れ込んだ
俺の足元
…丁度布団の上に倒れ込んだ奴が見上げる形で俺の顔を見て
片手を上げて一言


「よ…よぅ…金時ぃ…」


何時もの誤魔化し笑いを見たら……何かムカッとしました
はい、お仕置き決定


思いっきり奴の頭の側面に掌で突きを加える


……落ちたな


ふんっと鼻で笑う俺
取り敢えず天井から下がる紐を引っ張り豆球を点けた

見下ろせば衝撃でサングラスの蔓が耳から外れ
間抜けな顔が薄明かりに浮かび上がっていた



どつかれて薄ら笑み浮かべた儘の辰馬の顔
間抜けっつーか…
ん…?

此奴鼻先や頬が紅くなってらぁ
寒空に長く居たからか?

よく見りゃ短いけど結構睫濃いな
目を閉じてるとちょっと子供っぽく見えるっつーか…


………可愛いじゃん……


無意識に前屈みになって互いの顔が間近になる
何かこう…妙な気分になって来て……


う…うーん……


鼻息荒い俺の様子に気付いたか…呻き声を上げて奴が目を覚ました
ワタワタと慌てて身体を起こし腕を組むと布団の上に胡座を掻いて座る
先程からそういう状態だった様に


真ん丸に目を開くとキョロキョロと辺りを見回す辰馬
どうも…さっきの衝撃で今の状況が理解出来て無い様だ

面白いんで其の儘様子を見る
笑い顔を悟られぬ様口をキツく結んで


状況を理解し不味いと踏んだのか苦笑いを浮かべた辰馬


「久しぶりじゃのう金時〜、メリークリ…」


ぷちっ

あ…俺ん中で何か切れた
多分堪忍袋の緒


開口一番の台詞がそれかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ


「巫山戯んなテメェェェェェェェェェェェ」


俺は雄叫びと共に奴の首に腕を回しヘッドロックをかけた
自分の手首を掴むとグイグイ奴の首を締め上げる


「ぎ…ぎぶ…ぎぶ…」


丁度膝の上辺り奇妙な角度に捻られた奴の頭
苦しい呻きと共に言葉が洩れ
下についた手がバンバンと布団を叩いて埃を巻き上げる

あ…なんか口の端から泡が…
ちょっと遣りすぎか?

そう思って少しだけ腕の力を抜く
すると辰馬は苦しい息の下で言葉を告いだ


「き…今日はクリスマスイブじゃき…プレゼント持って来たちや…おんしが喜ぶが思うて…」


言いながらパシパシと背後に転がる袋を叩いて示す

ああ…そういや担いでたっけコレ
何?
プレゼント?
良いもん入ってんの?
可愛い所あんじゃん此奴

チラと視線を袋に移しながら首に巻いた腕から力を抜いた
ドスンと俺の膝の上に奴の頭が落ちる

下から真っ直ぐ俺を見上げる辰馬
視線が合う


う…うわ…なんか滅茶苦茶緊張すんだけどコレ
膝枕?
俺が奴に膝枕?

誤魔化す様に辰馬の頭をぐしゃぐしゃと掌で掻き回す



「ったく…連絡も寄越さねぇで粋なり窓から侵入するなんて…どんだけアホなんだよテメェは」


てか…俺に会いに来たって事だよな
イブっていやぁ…ほらそのなんだ……恋人達のイベントっつーか
可愛いじゃんよオイ

俺は自分の顔が紅くなるのを感じて視線を逸らした
誤魔化す様にプレゼントの袋の方へ

敢えて突っ慳貪な口調
ほら俺所謂ツンデレだから


よっ…と身体を起こす辰馬
ニッコリ笑顔を浮かべると転がってる袋を手に取って
すっと俺の前に差し出した


「開けてみぃ?」


子供一人位軽く入りそうな大きな袋
差し出されたそれを引ったくる様に奪う


「…迷惑料として貰ってやるよ…」


言って口を縛った紐を手早く外し袋を広げて中を覗いた

薄明かりの下
袋から零れ落ちたのは沢山の菓子
その中に一際大きな長靴型のモノが2つニョッキリと顔を出している


これは……

頭の中で遠い記憶が走馬燈の様に蘇る

昔…金持ちの子供等がコレ持っていた
親と手を繋ぎ楽しそうに俺の前を過ぎていく

羨ましくて
恨めしくて

あんなモンは高いだけで大したモンは入ってない
その金あったらもっと良いモン腹一杯喰った方がよっぽどいい
…なんて悔し紛れの悪態吐いたもんだった


「履いてみたいって言うとったじゃろ?」


にこにこ笑う辰馬の言葉
そういや以前彼奴と居た時うっかりそんな事言ったな
紅くてデッカイ長靴型の容器
それ履いたら楽しいだろうなぁとか

あん時は辰馬といてて…つい気が緩んで…
俺とした事がそんな事口走っちまった

…そうか…あん時の事覚えてて…


あれ…?
何だよ此の胸の痛み
キュッとしたよキュッと

俺って乙女ですかゴルァ
自分で自分に突っ込み入れる

やべ…
何かウルッてなって来てんだけどよ…
どんだけ俺にダメージ喰らわせてんの此奴

表情を悟られぬ様に袋の中身を見詰める俺
敢えて気付かぬ振りなのか相変わらず明るい調子の辰馬


「折角じゃから一緒にお祝いしとうて」


言うと赤い箱の板チョコを俺の膝にポンと置いた
暫しチョコに視線を落とす

あーーもーー何だよそれぇぇぇぇぇ

俺はチョコを手にすると包みを手早く毟り取り
自分の口へと持っていった

結構な大きさのそれは全部口に入る事は無くて
冷えて堅いそれを思いっきり歯でパキンと噛み割った

口の中のチョコは体温でトロリと溶けて
ほろ苦くて甘い其の味は今の俺の心みたいで

横でじっと見ている辰馬はそれを見透かしてそうで…


……も…駄目…


辰馬の後頭部に手を掛けると其の儘グイッと引き寄せて
俺は強引に唇を押し当てた

驚いてうっすら開いた辰馬唇の隙間へ
顔を少し斜めにし上から下へと溶けたチョコ流し込む


「一緒に…喰うんだろ…」


唇を離した俺は少し上擦った声
誤魔化す様に腕で口元を拭いながらそう言った


ぼんやりとしたままの辰馬は見る間に耳迄紅くなっていく
飲み込めず零れたチョコが唇を濡らしてまるで紅を差した様だった



…俺…マジで理性飛ぶ……





此、絵板にあるpetit小説の銀時versionです。
よりラブラブ感を味わっていただけたらなぁと思います。
てへ^^;
って…仕事あんのに逃避してあげてる私って一体…orz