俺達に明日は無い(4)



ザザザザ。
下草を踏む音。

続いて背後から斬撃。
不意に現れた気配に天人達が一斉に其方へと視線を向ける。
辰馬も一瞬視線を向けたが左側の為に其の姿を見る事は出来なかった。
が……其の気配には覚えがある。

此の間に出来た天人の隙を突いて刃を奮うと囲みを破った。
白い影が敵を斬り倒しながら辰馬の前方へと躍り出る。


「銀時っ!」


辰馬は気配の相手の名を口にした。
通称白夜叉。
其のの名さながら夜叉の様な戦い振り。

軽い身のこなしで敵を倒していく銀時が辰馬に向けて声を上げる。


「ったく…テメェはやっぱ口ばっかだなぁっ。」


そう言いながら辰馬の横へと銀時が舞い降りた。
背を合わせる形で敵と対峙する二人。
ちらと背後の銀時に視線を向けながら辰馬が声を掛ける。


「こがぁな所に来て、おんしどうするつもりじゃあ。」


少し嬉しげで…でも少し困った様な口振り。
だが明らかに先程よりも余裕のある声。

ふんっと鼻で笑うと銀時が返す。


「テメェがのろまだから迎えに来てやったんだ。有り難く思え。」


そう答えた後、行くぜ…と短く発し銀時は敵へと向かっていく。
おお…と答えると辰馬も又眼前の敵へと向かっていった。




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銀時と小太郎達は船の上で息を潜めていた。
筵の下には鉄の板。
多少の攻撃には堪えられるだろうが…其れでもやはり心許ない。
敵に気取られればこの作戦は灰燼に帰す。

隙間から周囲の様子を窺いつつ、何時何があっても良い様に刀の柄に手を掛けた儘の銀時。



どの位経っただろうか…森の中が騒がしくなって来始めた。
多分先発隊が戦っているのだろう。
小太郎が懐から取り出した懐中時計の時刻を見る。

合流時間迄余り時間が無い。
「い組」は思ったより遅れている様だ。


小太郎は不安げな表情で森の方へ視線を向けた。



刀の柄に手を掛けていた銀時が不意に小太郎の肩に手を置く。
其の儘耳元に囁く様な声。


「…ちょっと行って来るわ。」


小太郎が弾かれた様に振り返る。
トーンは落とし目ではあるが鋭い口調。


「馬鹿者。其れじゃあ貴様迄…。」


其処迄言った時、自信ありげな笑みの銀時が遮る様に言った。


「俺の腕と足を信じろよ。」


言われて小太郎は口籠もる。
しかし視線は厳しい儘、真っ直ぐ銀時を見据え。

暫し視線を交わしていた銀時が瞼を閉じてフッと笑いを洩らした。
小太郎の肩に置いた手でポンっと叩いた後、上を覆う鉄板に手を掛けると中腰の姿勢で一歩踏み出し。


「俺達の強運も信じろよ。」


言って船縁を蹴ると森の方へとあっと云う間に消えて行った。
残された小太郎は苦笑いを浮かべ諦め混じりの溜息と共に呟きを漏らす。


「…とっとと帰って来いよ。」


再び開いた懐中時計に視線を落としながら…。




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一人で相手にしていた時と違い、あっと云う間に敵勢は薙ぎ払われていった。
先程迄の疲れも吹き飛んだ様に、辰馬は手にした刀を振るう。

合間に袖で視界を塞ぐ血を拭い。

額の生え際に出来た傷は10cm程。
場所が場所だけに出血量は多いが致命傷などでは無さそうだ。
銀時が来た事で己の傷を冷静に判断すると、辰馬は血に濡れた片目を薄く開け周囲を窺う。


銀時のお陰か敵の数も随分と減っている。
此なら一気に橋へと行けそうだ。

目配せで合図する銀時と共に刀を構えたまま一気に走り出す。


視界が急に明るくなり……て辰馬と銀時は思わず目を眇めた。

僅かとはいえ月明かりの下。
真っ暗闇の森の中とは勝手が違う。


辺りを見回せば橋の中央に仲間が数人。

高杉が橋の反対の敵を牽制しながら、先頭の船へと仲間を降ろす。
橋から船迄は高さ2m程だろうか。

先ずは半分。
下では覆いを上げて小太郎達が仲間を受け止めている。
高杉と残りの仲間は敵を倒しながら次の船へのタイミングを計っていた。


橋の袂で残りの敵と対峙した銀時と辰馬が高杉達に手を振ってみせる。
銀時がいる事に一瞬意外な表情を浮かべた後……遅れた辰馬を気にしていたのだろう。

ホッとした様子の高杉は、だが敢えて其れを顔には出さず。


「馬鹿野郎共……来やがったか。」


其れだけ言うと仲間と共に2つ目の船へと飛び降りた。
追っ手に攻撃されぬ様銀時と辰馬は橋の中央へと駆けていく。

もう3つ目の船が橋の下迄来て居たが、追い縋る敵を相手にしては辰馬も銀時も降りる事が出来ない。
追っ手が共に降りれば船の仲間に被害が及ぶからだ。


下の仲間が早くと招く声が足元を移動していく。


後数人。
此の場の天人さえ片付けてしまえば…。


銀時と辰馬は思いっ切り刀を振るうと船へと視線を向けた。
橋から船が離れていく。

3m…4m…。

橋を抜ければ流れが速いのだ。
既に先頭の船は遙か遠くなっている。


敵を刀で押すと、銀時は辰馬の手を引いて橋から飛び降りた。

思いっ切り欄干を蹴る。




ダンッ。



銀時の足が船の縁を踏み、弾かれる様に仲間の中へと倒れ込む。

手を繋いだ辰馬が其れに引っ張られる様に船の上へ。
銀時の上に勢いよく倒れ込んだ。


頭を上げると先程の橋があっと云う間に遠くなっていく。


はぁ……。


受け止めた仲間の上、気が抜けた様に銀時が大きな溜息を漏らした。
囲む仲間達もホッとした様に溜息を吐く。

其の様子にきょとんとして居た辰馬が、クックックッと噛み殺した笑いを洩らす。

そして何時もの調子で大きな笑い声を上げた。


あっはっはっはっはっはっ。





夜明け前。

河面を流れる風と皆の笑い声が、彼等の痛みと緊張を流していった。



やっと終わりましたー。
長かったですね此処迄。
大した内容でも無いのに……。

其れよりも文章が何か最初と最後で変わってる気がする。
最初の方凄い酷い…。_| ̄|○
久しぶりに書いた文だけにスッゴイ酷い…。
よく見りゃ誤字脱字もあるし。←じゃあ書き直しなさいよアンタ…

ふふ……。
恥は掻き捨てなのですよ。
って事で何時か自分で我慢の限界が来たら書き直すかも知れません。←図太いぞ

だって見直しするのすら苦痛っていうか悶絶しそうなんだもん。


ってか、おまけがあるんですよおまけが…。_| ̄|○
そのおまけを書きたいが為に書き始めた話だったりして。
てことで…近いうちにおまけ上げます。(^-^;