俺達に明日は無い(2)


「じゃあ、俺は辰馬と組む。ろ組は銀時と桂で良いな。…この方がお互いやりやすいだろう。」

此の言葉に皆は納得した様子でゆっくりと頷きを返す。


今回の作戦では銀時と坂本は別々に振り分けられた。
本来なら陽動組に人数を割くべきなのだろうが…船組の方が人数が多い上怪我人中心。
船着き場付近に敵がいる事を想定すれば、どうしても銀時は其方に行かざるを得なかった。
そして…手勢が少ない場合、小太郎より血の気の多い高杉の方が坂本と組むには適任。

もっともこれは彼等4人が二手に分かれて行動する時の定番パターンでもあった。
猪突猛進、特攻型の銀時と坂本。
リーダータイプ、慎重派の小太郎と高杉。
前者後者の組み合わせが互いに一番楽なのだ。

「…具体的に作戦を詰めようか。」

小太郎がそういうと3人が頷く。
作戦の一番の難問は合流時間。
その為には、ろ組が何時船着き場を出発するか。

い組は出来れば早めに合流場所へと行かねばならない。
だが余り早ければ敵に囲まれる可能性が高い。
しかも船の存在をも敵に知らせる事になる。

洞窟から合流場所迄は約1km程。
普通に歩けばそう遠い場所では無い。
しかし敵を相手にしながらでは其れよりもかなり時間を喰う筈。


頭を悩ませている小太郎達の肩をポンッと叩いて笑顔の坂本が言う。

「30分もありゃあ大丈夫。わしらが出た後30分したら出発してくれ。……のう高杉。」

坂本がそう振ると片膝に顎を載せ視線を落としていた高杉も頷いて。

「其れ以上待てば今度は貴様等の方が危なくなるだろう。」

ちらりと小太郎・銀時に視線を向けてニヤリと口の端を上げた。
確かに、敵に気取られ背後を襲われたら…。
高杉の意見に頷くと銀時も口を開き。

「ま…やってみるしか無いだろ。」

言って不敵に笑って見せた。

「そうだな…やってみるか。」

小太郎が眉間に皺を寄せ答えた。

「時間はこれで合わせちくれ。」

坂本が懐から懐中時計を取り出し小太郎へ手渡す。
頷くと小太郎はそれを預かり懐に収め…。

「これを形見にさせるなよ…。」

真っ直ぐ坂本の顔を見詰めながら冗談ごかしにそう告げる。
坂本は小太郎と同じように真っ直ぐ見詰め返しながら笑顔で答えた。

「心配せんでいいき。大船に乗ったつもりでおれ。」

坂本の言葉に小太郎は微苦笑で返す。


此処で会議は終了。
後は実行に移すのみ。
小太郎は奥で休んでいる仲間の所へ知らせに行った。




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準備を済ませた彼等は、それぞれの組に別れ其の時を待つ。
羽織の紐を結び直していた坂本の背後に銀時が立ち、肩に手を置くと間近で小さく声を掛けた。

「ヘマはすんなよ。」

顔を少し斜めにし視線を背後に向けると坂本が答える。

「大丈夫じゃき。仲間ばあ絶対守るきに。」

相変わらずの笑み。
だが笑みの形に細めた目の光は強く。
作戦前に既に坂本が戦闘モードに入っているのだと銀時は気付く。

「テメーは口ばっかりだからなぁ。」

言うと軽く笑いながら坂本の肩をポンポンと続けざまに叩いて、銀時は自分の組へと戻って行った。
銀時が去ると今度は高杉が側に来た。
肩に手を置き真横に並ぶ。
顔を近付け周りに聞こえぬ程度の声で。

「何があっても立ち止まるなよ。」

眉根に皺を寄せ半眼の表情でそう言うと肩に乗せた掌に力を込める。
甘い所のある坂本に対して、もし不測の事態が起こっても兎に角進めという高杉なりの忠告。
それは辛い選択でもあるが…皆を守る為には仕方のない事。
戦場では小さなミスが命取りになる。

冷静沈着な高杉は時折脱線しがちな坂本にとっては良いストッパーでもあった。

「おんしが付いちょるき、安心ぜよ。」

そう答えると瞼を伏せて笑みを浮かべ。
坂本は肩に乗った高杉の掌を安心させる様にポンポンと軽く叩いた。

「よっしゃあ、そんなら行くかぁ。」

瞼を開くと、伸びをする様に両腕を上げ坂本が声を上げる。
薄暗い蝋燭の明かりの中で仲間の声が追う様に低く上がった。




先ずは、い組が先発。
有り難い事に今夜は三日月。
外は余り明るく無い。
此ならば幾分か敵に狙い撃ちされにくいだろう。

仲間の一人が洞窟を出て周囲の状況を探って来た。
10m四方には敵影は無し。
少数と侮ってか…天人達は余り此処を重要視していない風で。
多分そんなには人数を配置して居ないのだろう。

報告を受けた高杉が指示を出す。
断崖からの狙撃に備え出来るだけ林寄りに…。
指示を受け、坂本を先頭に数人ずつ宵闇に紛れ洞窟を出ていく。



身を屈め足早に洞窟を離れる。
林の際に行き周辺を探ると更に10m先の林の中、坂本は僅かに動く物を見付けた。
タタッ。
軽快な足音の後、闇の中に一筋の閃光。
続いて何か重い物が倒れる音。
辺りに鉄の臭いが立ち込める。
先ず一人。

「洞窟に近い敵は全て始末し、背後の憂いを無くすのが先決だな…。」

高杉の低く抑えた口調。
その指示に後から続く者達も周辺に気を配り静かに進んでいく。
しんがりは高杉。
危険な位置だけに、慎重派の高杉には適任だった。
坂本も安心して先に進めるというもの。

一人を倒した事により、気配に気付いた敵がじわりじわりと間を詰めて来るのが解る。
ザンッ。
何かを断つ音に続いて重い物が落ちる音。
それが幾つか立て続けに起こる。
一撃必殺の剣で坂本は敵を薙いで行った。
四方からも仲間の斬激が聞こえる。
本格的に戦闘が始まった様だ。


そろそろ良い頃合いか…。
洞窟から30mを過ぎた辺りで、周辺を窺っていた高杉がそう思った時。
坂本が道へと躍り出た。
陽動開始だ。
周囲に聞こえる様に大きな声で坂本が笑いながら叫ぶ。

「アッハッハッハッ。なんじゃあ、敵も大した事は無いのう。」

その声に一気に周囲が殺気立つ。
やはり洞窟から距離を置いた先の地点に敵が陣取っていた様だ。
幾つもの足音。
殺気を伴った気配が一斉に近付くのが解る。
刃を青眼に構えると坂本の纏う空気も変わった。
元々争い事や殺生を好まぬタイプだが、戦場では雰囲気すら一変する。
仲間を守る……その一点において、坂本達4人はより高い戦闘力をみせた。

「どぅりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ。」

高く跳ねる様に、声を上げて坂本が斬り込んでいく。
上がる血飛沫と断末魔の叫び。
後には累々と天人の死体が転がるのみ。
返り血で濡れた羽織が僅かな月明かりに光る。

いつもとは違う雰囲気。
戦場ゆえに勿論それは皆同じ事なのだが。
無機質な表情で次々に敵を薙ぐ坂本は全く別の人物の様に見えた。
背後を守る高杉にとって、こういう場ではそれは返って安心感となる…。


先程とは違い一斉に攻めて来る敵に仲間達も共に刃を奮う。
先の戦いで生き延びて来た者達だけに此処にいる者全員が並々ならぬ実力の持ち主なのだ。
勢いに乗って各人が確実に敵を倒していく。

後方についた高杉は敵を倒しながら断崖の上に意識を向ける。
何かの気配。
きらりと光る銃口。
断崖の上の敵もどうやら此方に気付き狙いを定めて来た様だ。

「林の中へっ!」

大きく手を挙げ示す高杉の掛け声を合図に皆が林の中へ飛び込み木の陰に移動する。
其れを追う様に敵も林側へと走り込んで来る。
陽動は成功。
後は林沿いに進み、上からの攻撃を避けつつ敵を潰すのみ。


星明かりも届かぬ程の林の中で途切れる事無く寄せ来る敵を倒しつつ彼等は進んで行く。
辺りは血の臭いで充満していた。



此処迄凄い説明が多かったですね。(^-^;
でもまぁ、状況とか地形とか作戦とかキチンと説明しないと。
話がうまく伝わらないかなぁなんて…。

長く文章とか書いてなかったんで、ハッキリ言って変です。
こんな文章だったかな私…とか思っちゃいました。

出来ればこう…情景が映像で見える様な文章が書きたいなぁ。(´ヘ`;)ハァ