「あー…いかん。フライト迄寝ちょくかの…。」
ターミナルに入った、わしはふらついた足取りでベンチを探した。
何度も来ている場所じゃからこんな状態でも難なく辿り着く。
出来るだけ端のベンチを選びよたよたと歩いて腰を下ろす。
「解っとるんじゃが止められん。」
そう、充分解っとるんじゃ。
深酒はいかんち。
いつも陸奥にも怒られとるきに。
が…どうしても止められん。
ついつい、酒が入ると調子に乗ってしまう。
そう考えながら苦笑いと共にアッハッハッと力無い笑い声を洩らす。
ああ…それを言うたらヅラ辺りはきっと。
「酒が無くともお前は調子に乗りすぎなのだ。」
とか、渋い顔で説教始めるんじゃろうのう。
眉間に皺を寄せたヅラの顔を思い浮かべて苦笑いと溜息一つ。
取り敢えず寝よ。
そう思うてわしは腰掛けたベンチに長々と横になった。
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「…………からっ!」
ざわつくターミナル内。
その中で一際大きな声が間近に聞こえる。
何じゃ煩いのぅ。
さっきからやけに大きな声がする。
何かあったんじゃろうか。
……それにしても頭が痛くて重い。
それに熱いっちゅうか…。
ちょっと熱っぽいんじゃろか。
もう少し寝ときたかったんじゃが…。
「お客様ァァァ!!大丈夫ですかァ!?」
職員らしい声。
あー別に具合が悪いんじゃのうて2日酔いじゃき…。
ん?
もしかして時間じゃぁいうて起こしてくれとるんじゃろうか。
わしは仕方無しに重くズキズキする頭を抱えてベンチから起き上がった。
「フライトの時間かや〜。」
聞いてはみたが、頭がぼんやりして相手の返事は良く聞こえん。
何じゃ、音が遠いのぅ。
だが頭がどうのというのだけは辛うじて聞き取れた。
「なんじゃぁ〜〜頭ァ?」
そんな心配される程、顔色悪いんかのぅ。
「なんかズキズキするの〜〜。昨日飲み過ぎたきに。アッハッハッハッ!」
2日酔いじゃき気にせんでええち。
何かバツが悪くて笑って誤魔化す事にした。
医者なんぞ呼ばれた日にゃあ洒落にならん。
…………しかし、ちょっとヤバイんじゃろうか。
起き上がった時から寝汗が流れてきちゆう。
「寝汗もベトベトじゃ。」
そう呟いて手の甲で汗を拭った。
あれ?
拭った手の甲に視線を落とすと妙なもんが見えた。
サングラス越しに見た赤黒い液体。
「あれ?真っ赤じゃ…。あートマトジュース飲んだから。」
そういや、酔い覚ましに飲んだんじゃった。
血ぃみたいに思えるんはサングラスのせいかの。
頭痛で考えるのも面倒臭く、わしゃあそう思う事にした。
何やら横で未だ騒いでるターミナル職員。
じゃが正直怠くてこれ以上話す気にならん。
仕方無い。
先に船に入って休むとするか。
酔い覚ましに取った地球周遊の遊覧飛行。
ぐるっと巡っとる間に酔いも醒めるじゃろ。
そう考えてわしはベンチから立ち上がった。
ああ…まっこと身体が重い。
こんなに飲み過ぎたんは久しぶりじゃあ。
そんな事を思いながら自分の乗る船のゲートに向かってゆっくりと歩き出した。
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