再会(3)


久しぶりじゃいうのに、銀時の突っ込みは容赦無いき。
あっはっは。
思わず苦笑い。



耳に入る爆発音と喧噪。
襟を掴んどった銀時の手が離れて床に落とされる。
わしは顔を押さえサングラスを直しながらヨロヨロと其の場に立ち上がった。

いやあ、このサングラス丈夫じゃあ。

さっきの衝撃を思い出し、感心しながら銀時の後を追う。


繰り返す小爆発。
どうやら此処はコクピットの様じゃ。
もうもうと立ち込める煙で前がよう見えん。
さぐりさぐり歩いちょったら下駄の下に妙な感触が…。
何か音もしたぞ?

「あれ?何か踏んだがか?」

ぐにょっとした感触に思わず下駄の裏を確かめる。

「オイ早くしろ!!」

急かす言葉に周囲を窺いながら銀時のおる方へと向かう。
辺りは酷い状態じゃった。
彼方此方から吹き出す煙・倒れた人・逃げまどう人。
メインモニターは亀裂が入りバラバラと落ちる部品や欠片。
コクピットは崩壊寸前。

「あちこちで誘爆が起きちゅー。船に爆弾しかけるなんぞどーかしとーど。」

兎に角コンピューターで状況を確認せにゃあ。
わしは銀時の横を通り過ぎると目についたモニタに寄り被害状況や操縦法を確認した。
キーを叩くと船内の破損状況は出た。
大体の操縦法も…。

あ、いかん。
画面が消えてしもうた。
こりゃあいよいよやばい。

が、しかし…わしが動揺したら皆も益々不安になる。
銀時の仲間らしい子らも不安そうにこっちを見ちょるき。

…此処はいっちょう可愛いボケでもかましてみるかの。

「…よーし準備万端じゃ。行くぜよ!」

わしは倒れちょるパイロットの両足を握って叫んだ。






……やっぱり銀時は相変わらず手厳しいのぅ。

散々拳で殴られた上、髪ばあひっ掴まれる。
何か顔が熱うて鼻の奥がツーンとしよる。
また鼻血が出たかの…。

拳を構えた銀時の顔が近付いた。
口元は笑っちょるが目が笑っとらん。
こういう時の銀時は怖いき。

「おーい、もう一発いくか?」

いやもういいです。
充分です。

……しょうまっこと痛いき。



「アッハッハッハッ!こんなデカイ船動かすん初めてじゃき勝手がわからんち。」

わしは観念して正直に答えた。
兎に角舵を探さん事には始まらん。

「舵はどこにあるぜよ?」

問い掛けるわしの目の前で3人のコントが展開しちゅう。
仲良しさんじゃのお。
この二人、さっきから一緒じゃったが…銀時の今の仲間じゃろうか。
交互に二人の顔を見る。
眼鏡を掛けた少年にチャイナの女の子。
……妙な取り合わせじゃなあ。




「銀さんコレッスよ、コレ!」

ぼんやりしちゅうと、眼鏡のボクの声が頭上でした。
舵を握っちょる。

「ふんぐぐぐ!アレ!?ビクともしない!!」

苦戦する眼鏡のボク。
なんじゃ?
ロックでも掛かっちゅうがか?
追ってわしも上へ上がると眼鏡のボクに声を掛けた。

「ボク、でかした。あとはワシに任せ…。」

うェぶ!

急いで駆け上がったき、何か苦いもんが上に…。

「ギャー!!こっちくんな。」

眼鏡のボクが金切り声を上げる。

いやぁ…スマンスマン。
我慢しよう思ったんじゃが、ちいとばかし遅かった。
前のめりで吐くと苦笑いを浮かべる。
……そういやトイレで吐いたき、出るもんばぁ無かったの。

「アンタ船好きじゃなかったの!?思いっきり船酔いしてんじゃないスか!!」

わしの様子に眼鏡のボクは的確な突っ込みばあ入れて来る。
うう…気゛持゛ち゛悪゛い゛。
続く嘔吐感。
上下する熱いもんをグッと堪えて小声で答える。

「イヤ、船は好きじゃけれども船に弱くての〜。」

わしは力無く呟いた。

「何、その複雑な愛憎模様!?」

更に語気を強めての突っ込み。
銀時の仲間だけあって容赦ないのう。




吐き気で弱り切ったわしをしり目に3人がまた愉快なコントを繰り広げだした。

「新八、もういいから私に任すヨ!!私、文集に将来の夢パイロット書いたヨ。」

いや、チャイナのお嬢ちゃん…そりゃあ操縦の根拠にならんき。

「オメーはひっこんでろ。もういい俺がやる!普通免許もってっから。こんなモン原チャリと同じだろ。」

銀時…普通免許じゃ船は操縦出来んぜよ。

「いやっスよ、アンタらに命預けてたら、何回転生しても足りねーよ!」

眼鏡のボク、相変わらず素晴らしい突っ込みじゃのう。
この3人でおったら、仕方無いか。
遣り取りを見ながら、何となく銀時達の日常ばあ想像した。
楽しそうじゃ。

ちくっと安心したぜよ。


3人の会話に心の中で突っ込み入れちょったら、気持ちの悪いんが収まってきた。
眼鏡のボクの突っ込みが入った所でわしは声を掛ける。

「オウオウ!素人がそんなモンさわっちゃいかんぜよ。」

しかし、わしの言葉を無視して舵を取り合う3人。

「このパターンは三人でいがみ合ううちに舵がボッキリっちゅ〜パターンじゃ。それだけは阻止せねばいかん!」

そう思うて3人の方へと一歩踏み出した。
と、何か堅いもんに下駄の先が引っ掛かる。

「ふぬを!!」

前のめりに倒れ込んだわしは慌てて手近な物をひっ掴んだ。
が…勢いが付き過ぎて止まらん。

ドサッ。

あ…何か嫌な予感…。

掴んだ物ごと床に倒れ込むと、わしの目の前にゃあ舵が。
周りの視線が痛い。

「アッハッハッハッ、そーゆーパターンできたか!どうしようハッハッハッ!!」

もう笑うしかないき。
わしはどうしようも無くて銀時の顔ばあ見上げた。

「アッハッハッハッじゃねーよ!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

銀時が凄い形相で叫んどる。



落下に伴う浮遊感。
どうやら星の重力に完全に取り込まれた様じゃ。
役に立たんでスマンのう。

パニックになっちょる3人をぼんやり見上げながら、わしゃあ、ちくっとばかし人生ばあ観念した。

益々落下の衝撃が激しくなる。
かなりの加速。
こりゃあしょうまっことヤバイ。
銀時もこの事態に冷静になって来た様じゃ。
目配せで各々が近くにいるモンを庇う様な体勢を取る。
わしは眼鏡のボクを銀時はチャイナの嬢ちゃんを。

……わしとしては嬢ちゃんの方が良かったんじゃが。

運を天に任せてわしらは来るであろう衝撃に備えて体勢を整えた。


やっと二十六訓終わりましたよ。
てか、後一本分あるんだった。
つか、その後がメインなのに……。

どんだけ長いねん。_| ̄|○

もう暫くお付き合い下さい。(^-^;